黒人落語

昔々あるところに弥兵衛という若者がおりました。
弥兵衛は村一番の働き者で朝から晩まで一生懸命畑仕事をしておりました。
その弥兵衛、その仕事ぶりを認められ村長の娘でもあるさよというそれはそれは美しい娘を嫁に迎えベトちゃんドクちゃんのように二人で一人幸せに暮らしていました。
そんなある日
「弥兵衛さん弥兵衛さん」

「なんだい、さよ」

「あたしできちゃったみたい」

「なんだ、壁でも出来たのか」

「あたしはベルリンじゃないわよ、赤ちゃんよ赤ちゃん」

「えぇー!そりゃめでたい!」

「最近どうも体調が悪いしプリンセスの日も来ない
と思ったのよ」

「生理が来てなかったのか。いやー、しかしめでたいね!」

それから月日が経ってついに出産の日となりました。
「男は役に立たないって外に追い出されたけど心配だなぁ……」

「あぁ……神様でも仏様でもなんでもいい無事に産まれてきてくれ……ノーコンテストだけはやめてくれ」

そんなことを弥兵衛が願っていると産婆さんが走ってきて言いました。
「あんた!無事産まれたよ!」

「よかったー!」

「よかったねぇ」

「そんじゃ早速顔を拝ませてもらうとするか」

「いやーそれはやめといた方がいいんじゃないかね」
産婆の言うことを不思議に思いながら
「さよ!よくやってくれた!さぁ子供の顔を拝ませてくれ!」
と言い家の中に入りました。
するとさよが
「いや、顔は見せられないわ」
となぜか言い赤ん坊の顔を布で隠してしまいました。
「そんなイスラムの女性じゃあないんだから」

「いや、ダメよ」

「見せろ」

「ダメ」

「えーい!」
と強引に布を剥がすと
「あーっ!!」
なんと赤ん坊は真っ黒。
どこからどう見てもバキバキの黒人です。
「さよ!お前これはなんだ!」

「暗闇よ」

「そんなわけないだろ!」

「じゃあ赤ちゃんよ」

「この色はなんだと聞いてるんだ!」

「肌色よ」

「肌色はこんな色じゃないだろ!」

「絵の具を混ぜたからよ」

「真っ黒じゃないか!」

「あなたが働き者で日焼けしているからじゃないかしら」

「お天道様に一度も当たってないのにメラニン色素MAXじゃないか!」

「あたしのお腹の中が暑かったのよ」

「原爆落ちたときの広島じゃあないんだ!お前の腹の中は摂氏3000度なのか!」

「いいじゃない、無事に産まれたことをお祝いしましょう。女の子よ」

「黒人で女なんて絶望的じゃないか!あぁ……神様、ノーコンテストにしてくれればよかったのに」

「しつこいわねぇ、わかった!二人目を産みましょう」
これを聞いて弥兵衛は呆れ返って言いました。
「よそう、また黒になるといけねぇや」
めでたしめでたし

届かないボール

キャッチボールとは2人、もしくはそれ以上が相互に投球・捕球を繰り返す行為である。
これはWikipediaでキャッチボールを検索すると出てくる説明だ。

小学3年生で野球を始めた僕は中学1年生になる頃にはそれなりにキャッチボールが出来ていたと思う。
僕の投げるボールは周りの皆よりも速かったし遠くに投げられた。
それ以外の打つ、捕る、走るは苦手だったが投げる事に関してだけは才能があったみたいだ。
小学生の時はキャッチャーをしていて1度も盗塁を刺したことがなかった。
投げるまでに遅すぎるのだ。
もちろん他のポジションでは僕は下手すぎて、中学生になったら野球を辞めようかとすら思っていた。

そんな僕は中学生になりピッチャーをやるようになって褒められるようになった。
ピッチャーなら時間がかかっても問題ないから出来るのだ。
中学2年生の頃には同い年のチームメイトは僕の球を全く打てないほどになった。
当たり前だ。キャッチャーが捕れないんだから。
だけどそんな僕は学校に行っていない、という理由で試合に出させてもらえなくなっていた。
そして、孤立していった。

落合さんに出会ったのはそんな時だった。
母親の同僚に病弱だが野球が大好きだという人が
いるのは知っていた。30歳を越えて未だに
キャッチボールをしたことがないということも。
そしてある日、母親に言われ落合さんと
キャッチボールをすることになった。
最初は嫌がったが、確か欲しかった本を買ってくれるというから行く気になったような気がする。我ながら現金だ。

とにかく細くて見るからに病弱そう、それが落合さんの第一印象だった。
挨拶もそこそこにキャッチボールを始めるがまずボールが捕れない、そして僕まで届かない。
全くキャッチボールにならなかった。
そもそもグローブが新品過ぎて弾き過ぎるのだ。
野球を知らない母親が胸に投げろと横から言って
きたが、胸投げたら確実に心臓に当たるぞと思っていた
心臓当たったら死ぬかも……と、変に緊張したのを覚えている。

15分ほどやったあと落合さんと母親と3人で少し話をした。
落合さんはスゴく興奮して、キャッチボールをしてみたかったということ、初めてグローブを買ってみたということ、野球は見るしか出来ないけどやるのも面白いと思ったということ。MAJORは今の野球漫画の中でもかなり面白いとも。
そして君には才能があるから野球を頑張れと
言った。
僕は微妙な顔をしていたと思う。当時の僕にはもう何を頑張れば良いのかわからなかったから。

その数日後から、母親が毎週マガジンとサンデーを会社が終わると僕に渡すようになった。落合さんが読み終わった物をくれるようになったらしい。お礼だと。
僕は母親を通して漫画の感想を毎週言うように
なった。
そしてそれに対する感想も母親を通して返ってきた。
僕らは母親を通して会話のキャッチボールをしていた。

半年ほど経って落合さんは会社を辞めた。
母親がそう言ったのを僕はそれをなんとなく聞いて部屋にまた戻った。
野球が出来なくなった僕はいよいよ何もしなくなり荒れた生活をしていた。
漫画の感想を言うことすらやめていたし、また
キャッチボールをしようと言っていたという母親からの言葉にも生返事でゲームを死んだ目で続けた。

その2週間後、落合さんは亡くなった。
持病が悪化したらしかった。
そのために会社も辞めたらしかった。
母親に葬儀に行くかと聞かれたが僕は断って部屋に戻った。
忙しい、と言って。ゲームがしたいからと。
本当はゲームがしたいのではなく逃げたいからってわかっているのを気付かない振りをして。

部屋にこもってゲームをしている僕の携帯にメールが届いた。
母親からだった。
内容は落合さんからのメールの転送だ。
そこには自分は今まで好きなものを出来ない人生でつまらなかった。野球をしたくても出来ず、だけど初めてキャッチボールが出来て楽しかった。
君のお陰だ。君はスゴい球を投げられるんだから今は出来なくてもこれから出来る。
そんな事が書いてあった。
僕はここにきて初めて後悔した。
もっと話せたのに、キャッチボールをする機会なんていくらでもあったのに。
なぜ自分はしなかったのかと。

未だにあのときの後悔を少し思い出す時がある。
MAJORを見たり、サンデー、マガジンを見かけるとだ。
数年後に僕は諦めていた高校に入り野球部で中学生の僕が欲しかったものを手に入れる事が出来た。
一番仲の良いチームメイトとの盛り上がる話題は漫画の話題だ。
それが出来るのもあの頃色々な漫画雑誌をくれた落合さんのお陰だと僕は思っている。
あの1度だけ使ったグローブは僕の家で保管されている。
せっかくだからと、たまに使わせてもらっている。

この文章はきっと届かない。
あのときのキャッチボールのようにだ。
それでも届いていると思って最後に書こうと思う。
当時は言えなかったけど、ありがとうございました。本当はもっと話したかったです。
貴方にもらったもので僕は少しだけ変わりました。確かに届きました。

黒人失格

「期待感」というものがある。
辞書によると、期待できるような感覚や予感のこと、あるいは良い結果などになりそうだという期待のことらしい。
新しいゲームは事前の情報を見る限り面白そう。食べログを見るにあのラーメン屋さんは美味しそう。
こういったことだ。
だが、これが人にする期待感ではどうだろう?
それも外見からのものでは。
あの人は優しそうな顔だから怒らなそう。あの人は怖い顔をしてるからすぐ怒りそう。
実際これが当たってるかはともかく大抵の人は初対面の人に対して印象で決めるだろう。

僕が神田くんに会ったときもそうだった。

「あいつサッカー下手すぎん?」
それが神田くんへの僕の第一印象だ。
その日はクラスでサッカーをするという事になっていた。
野球しかせず、一切学校活動に参加していなかった僕だが流石に危機感を感じて初めてクラスに行き学生らしい行動をした日でもある。
当然クラスメイトは誰一人知らないが神田くんだけはその日に一発で覚えた。

「(あいつ黒人なのに)サッカー下手すぎん?」
正確にいうとこれが第一印象だ。
180センチを越えるであろう長身と、見てわかる筋肉質な身体つき。走るのも速い。しかも左利きの様だ。
だが、致命的なくらいにサッカーセンスがなかった。
なんなら女子のが上手かった。
止まったボール蹴ろうとして自分の脚蹴ってたし。

もちろんこれは僕が悪い。
黒人は皆サッカー上手いわけではないのだ。
コーナーキックの時思いっきり蹴ろうとして靴を飛ばしてたのも仕方ない。

サッカーが終わって僕は神田くんに
「サッカー下手すぎない?」と話かけてみた。
神田くんは急に話しかけられてびっくりしていたが笑って
せやねん、俺サッカーめっちゃ下手やねん」
と言った。
僕はなんで黒人なのに関西弁なんだよ、とか色々思ったが来月もサッカーだと俺はうれしいみたいな話をしてその日は終わった。

次に会ったのはたまたま授業のレポートを提出しに行ったときだった。
神田くんはめちゃくちゃ派手なピンクのDSでゲームをしてた。
話しかけて何のゲームをしてたのかというと
ポケモンをしてた」と言った。
ちなみにポケモンホワイトだった。僕は黒人ならブラックやれよ、と思っていた。

僕も奇跡的にポケモンブラックで厳選していたのでポケモンの話をして、交換したりして盛り上がった。
DSは妹さんのだったらしく、僕も妹のDSを使ってたので妹の話なんかもした。

そして神田くんの授業の時間になったのでメールを交換して別れた。

その日の夜、神田くんと電話をした。
神田くんは話しかけてくれて嬉しかったこと、実は最初に話しかけられたとき僕の顔が怖くてびびっていたこと、自分の両親はブラジル人たが一度も会ったことがなく、ずっと日本に住んでいるのに外国人扱いされるのが辛いことなどを話してくれた。

神田くんの関西弁は一緒に住んでいるおばさんが岡山弁をしゃべる影響ということ。サッカー下手すぎるのは右利きなのにカッコいいと思って、ロベルト・カルロスみたいに左で蹴ってるからということ。
ラブライブは面白いということ。
この辺はこいつアホやなと思っていた。

それから僕らはたまに遊ぶようになった。
学校の時間が合うときに2人でゲームをするというだけだったけど、とても楽しかった。

神田くんがミスをする度に僕が
「親にどういう教育受けてんねん」と言うと
「親に会った事はねぇんじゃ」という千鳥のノブさんみたいだけど、千鳥のノブさんが絶対テレビで言わないツッコミをしてた。

そして、一年が経って神田くんは卒業、僕は退学をしてお互い別れることになった。
いつか二人でラブライブの聖地である東京の神田明神に行こうと。
神田だけに。

あれから僕らは一度も連絡をしていない。
メールアドレスを失くしてしまったのとお互い名字しか知らないからだ。
この便利な社会でも検索すら出来ない。

神田くんへ
僕は数年後にあれだけ行かないと言っていた東京に住んでいます。
神田明神にも何回も行きました。
ラブライブサンシャインは見てるのかな?
また話したいです。
恥の多い人生を相変わらず送っていますが楽しく過ごしています。
健康に気を付けて、また会える日を願っています。

オタへの扉~めしどこかたのむ~

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電車男という話をご存知だろうか?

今は昔電車男といふものありけり、そのものサブカルに影響与えれり。

これは平安時代に書かれた竹取物語の一文を抜粋したものなどではなく僕が今考えた一文だが、実際電車男の存在が現代に与えた影響はとてつもないものだった。
現代においてこれ程サブカルチャーが受け入れられている要因の一つであろうと僕は思う。
ここまで後世に影響を与えたのはエヴァンゲリオン綾波レイが作った無口キャラは青髪という法則レベルだ。
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電車男が登場する前の2ちゃんねるは刺すか刺されるかの雰囲気が凄く、当時小学生だった僕は初めてオススメのラノベスレで「灼眼のシャナ」と書き込んで「にわか死ね」「小学生か?」などと前世で大罪を犯したレベルで煽られてなぜ僕が小学生だとわかったのかと恐怖したのを覚えている。
半年ROMれなどの文化もこの辺りではまだまだ現役だった。

しかし電車男の登場後2ちゃんねるは認知され始め、僕が中学生のころは2ちゃんねるをやっているというのは隠れキリシタンの様な状態だったのが気付けば今ではかなりの人間が見るようなコンテンツとなった。

当時電車男のドラマが始まる前にはアニメを観ている、というのは結構な罪であり、大人でアニメを見ているやつは全員宮崎勤予備軍に思われていた。
ドラマが始まったあともアキバ系という存在は恥ずかしいもの、とされていてそのせいで僕の友人のS君は眼鏡をかけていて小太りでいつもチェックのシャツを着ていたのもあり、
「豚」f:id:sekaiheiwasyomou:20191026141104j:plain

「飛べない豚」f:id:sekaiheiwasyomou:20191026141145j:plain

「牧場の貴公子」
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テポドン
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(全校集会の時にとてつもない音の放屁をしたため)と呼ばれていたのが、
電車男」「アキバからの使者」「キモオタ」と言われるようになった。
ちなみに彼は女子からはATフィールド張られまくってた。シャナ的には封絶。
彼が通ろうとすると女子が避けるため「モーセ」とも言われていた。
というか他人事のように言ったけどなんなら今あげた忌み名のほとんどは僕が言ってたわ。ごめん。

そんな恥ずかしいものの代名詞であったものが、僕が高校生、社会人の頃にはむしろアニメを観ている事がカッコいいに変わってきて、最終的にはアニメを観ているのが普通になり、自分より年下の世代と話すたびにアニメが当たり前に根付いてることに驚かされる。

電車男という話が本当にあった話なのか?という事は散々言われていることでその真偽についてはわからない。ただ、一人の人間が産み出した文章がここまで影響を与えたというのは凄いことだと思う。
なんの面白味もない最終的な感想になって申し訳ないが。
この話のオチとしては電車男エルメスと付き合ったあと、性行為の様子を書いたが全くウケず「下手なエロ小説」「こんなの見せられるならもう来ないで欲しかった」等と前世で大罪を犯したレベルで叩かれた。
まるでかつての僕のように。
だから二期は絶望的。

〜nkgw Free Hugs...〜 ステップとは

恋愛のABCという言葉がある。
今の世代には馴染みがない言葉だと思うけど1980年に確かに流行った言葉だ。
簡単に説明すると恋愛でどこまでのステップにいけたかという事で、AはキスBはペッティング(SEXの前段階までの行為。身体を舐めたり)CはSEXを意味している。
これは趣味にも言えることだと思う。

僕は漫画を読むのが好きだ。そしてせっかくなので漫画のABCを
A
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B

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C

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と適当に決めてみた。
なんの話をしたいのかというと
「好きな漫画は?」
この質問についてだ。
相手が初対面やあまり親しくない場合これが非常に悩む。
Aをあげるのは簡単だが、相手がかなりの漫画好きだった場合にも相手も合わせてくれて「あー、ワンピース面白いよねー」みたいなクソみたいな会話で終わってしまいもっとマイナーな面白い漫画の話が出来る機会を捨てることになるのだ。

かといってCでは相手が詳しくない場合「なんだこいつ?漫画詳しいアピールしやがって陰キャかぁ?」と思われる。
いきなりSEXが許されるのはAVだけの話だ。
希崎ジェシカにしろ。f:id:sekaiheiwasyomou:20191019081657j:plain

一か八かと「新堂エル先生の触手ものですかね」と言って検索されたら次の日から確実に村八分レベルになる。
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いきなりSEXどころの話ではない。
アナルレイプレベル。

そうなると、Bが正解!と思うかもしれないが逆に「こいつちょっとマイナーなの知ってるだけで漫画詳しいアピールするやつかぁ?」と思われる危険性があるのだ。

結局、どんなに無駄のように思えてもABCと段階を踏むべきなのだと思う。
人間の大人は雰囲気づくりから始めるってFORKも言ってたし。
キスから始めるべきなのだ。そして身体を舐めたり盛り上げてようやくゴール。
いや、趣味の話をしたかったんだけどSEXの話になってるわ。これ。なんでだよ。

話を戻すけど「好きな漫画は?」この質問をされた相手とは漫画のABCで大体仲良くなれている。
友達のR君もその一人だし。

ワンピースの話から始まり、浅野いにおの話をして、BLUE GIANTの話で最近は盛り上がった。
そんな彼には中学時代買ってまだ読んでないジャンプを貸したらなぜかページめくりにくくなっていて、聞いたら「To LOVEるのページ舐めたわ」と言われた。
漫画にはBするなよ。
あとハグいけるなら告白しろよ。